
マイナースケールは一般的に「暗い、悲しい」と形容されることの多いスケールです。
実際、クラシックやポップスでも暗い雰囲気に感じる曲では広く使われています。
マイナースケールを効率よく覚えるためにはメジャースケールを覚えていることが必須となります。
もし、まだメジャースケールの項目を読まれていない方は「メジャースケールの仕組みと覚え方のコツ」をご覧ください。
マイナースケールとは?
日本名:短音階
マイナースケールは3種類あります。
- マイナースケールの基本となる、ナチュラルマイナースケール
- ナチュラルマイナースケールを変化させた、ハーモニックマイナースケール
- ハーモニックマイナースケールを変化させた、メロディックマイナースケール
ナチュラルマイナースケールを起点とし、それぞれ密接な関係があります。
ナチュラルマイナースケール
日本名:自然短音階(しぜんたんおんかい)
「A B C D E F G A」の順番で弾くとマイナースケールになります。
マイナースケールの長2度、短2度の音の並びは次の楽譜の通りです。
音程の並びは「長短長長短長長」となります。
第vii音とそのすぐとなりの第i音はメジャースケールとは違い、ナチュラルマイナースケールでは長2度です。
長2度では主音へ進む力が弱いため、ナチュラルマイナースケールには導音が存在しません。
メジャースケールとの関係
さて、ここでCメジャースケールを思い出してください。
Cメジャースケールは「C D E F G A B C」でした。
上がCメジャースケール、下がAマイナースケールです。
AナチュラルマイナースケールはCメジャースケールの第vi音(A)から順番に音を並べたものと一致します。
もう少し正確に、音楽理論的に言うのであれば次のようになります。
「メジャースケールの主音の短3度下から並べたものはナチュラルマイナースケールである」
別の例を見てみましょう。
これはGメジャースケールです。
Gメジャースケールの主音、Gの短3度下のEから音を順番に並べると次のようになります。
各音の音程関係も完全にナチュラルマイナースケールと一致しているため、これはEナチュラルマイナースケールであると言えます。
このことから、次のことが言えます。
以上の「調号はそのままで主音が短3度の関係にあるメジャースケールとマイナースケール」は平行調と呼ばれます。
※ナチュラルマイナースケール以外の2つのマイナースケールも、ナチュラルマイナースケールから派生したものと捉えることができるため、すべてを含めてマイナースケールと書いています。
平行調の例
CメジャーとAマイナー
- Cメジャースケールの平行調はAマイナースケール
- Aマイナースケールの平行調はCメジャースケール
GメジャーとEマイナー
- Gメジャースケールの平行調はEマイナースケール
- Eマイナースケールの平行調はGメジャースケール
ハーモニックマイナースケール
日本名:和声的短音階
ハーモニックマイナースケールはナチュラルマイナースケールの第vii音が半音高くなったスケールです。
上がAナチュラルマイナースケール
下がAハーモニックマイナースケールです。
※見やすくするためにナチュラルマイナースケールを一番最初の例よりも1オクターブ高くしています。
第vii音を半音上げたことにより、第vii音と第i音は短2度の関係になりました。
加えて、第vii音と第vii音は長2度から増2度へと変化しました。
マイナースケールの導音
第vii音を半音上げたことにより、第i音である主音と短2度(半音)の距離になり、主音へ進もうとする力が強くなったため、ハーモニックマイナースケールの第vii音はナチュラルマイナースケールとは違い、導音と呼ばれます。
ハーモニックマイナーの使われ方
ハーモニックマイナースケールは基本的に、特定のコード(和音)が演奏されているときに使うスケールです。
上の楽譜はAハーモニックマイナースケールの例です。
短調の曲ではときおり、第vii音を半音上げたコードを使うことがあります。
そういった場合にメロディーなどで使うスケールも第vii音を上げ、次に出てくる主音につなげることでフレーズが解決した印象を強くできます。
ハーモニックマイナースケールとはその名の通り、ハーモニック(和声、コード)的に使うことで短調をより短調らしくするためのスケールです。
メロディックマイナースケール
日本名:旋律的短音階
メロディックマイナースケールはナチュラルマイナースケールの第vi音、第vii音の2つが半音高くなったスケールです。
メロディックマイナースケールの第vii音もハーモニックマイナースケールと同様に導音です。
上がAハーモニックマイナースケール
下がAメロディックマイナースケールです。
ハーモニックマイナースケールでは第vii音を半音上げたことにより第i音と短2度の音程になりました。引き換えに、第vi音と第vii音は増2度の音程になり、メロディーとしてやや違和感、ぎこちなさのある音程が生まれてしまいました。
これを解消するものがメロディックマイナースケールです。
メロディックマイナースケールとは第vi音も半音上げることで、増2度音程をなくし、メロディーとしての自然さを補うためのスケールです。
上行形と下降形
メロディックマイナースケールにはメロディーが上へ上へと進むときに使われる上行形と、メロディーが上から下へと動くときに使われる下降形の2種類あります。
上行形
下降形
下降形では第vii音、第vi音の両方とも半音上がっていた音がもとにもどっています。
つまり、下降形はナチュラルマイナースケールと同じです。
メロディックマイナースケールの使われ方
メロディックマイナースケールはその名の通り、メロディーとしての自然さを考慮したスケールです。
メロディーをAハーモニックマイナースケールにした場合の例を見てみましょう。
こちらの例ではメロディーがF, G#, Aと連なっています。
メロディーがFからG#に進むときに増2度になってしまっていて違和感があります。
また、下の段の和音がE, G#を演奏しているため、メロディーがFだと音が半音と半音でぶつかってしまい、とても濁ってしまいます。
次はメロディーをAメロディックマイナースケールにした場合の例です。
先程、メロディーがF, G#となっていた箇所がF#, G#になることで増2度がなくなり、自然な流れになりました。
また、下段の和音との半音のぶつかりも緩和されたため、濁りも解消されました。
メロディーが下降する場合
この例ではメロディーが主音に向かわず、下降しています。
メロディックマイナースケールは主音へ進むための第vii音を半音上げた際に生じる、第vi音と第vii音の増2度を無くし、メロディーに違和感を出さないために使用するスケールです。
では主音へ進まない音の場合、そもそも第vii音を半音上げていないので増2度も発生しません。
そのため、下降形では第vii音も第vi音も半音あげず、ナチュラルマイナースケールと同じ状態で使用します。
マイナースケールの覚え方
マイナースケールを覚えるときはメジャースケールを起点とすると覚えやすくおすすめです。
平行調で覚える方法
メジャースケールとマイナースケールが平行調で存在し合うことは一番最初に紹介しました。
平行調の法則は次の通りです。
「メジャースケールと同じ調号で主音が短3度下から並べたものがマイナースケール」
この譜例はGメジャースケールとその短3度下のEマイナースケールが平行調の関係です。
メジャースケールをすべて覚えて、その短3度下のマイナースケールも同じ調号であることさえ覚えれば次のような求め方をできます。
- 調号、音の並びを知りたいナチュラルマイナースケールを決める。
例としてFナチュラルマイナースケールの調号を知りたいことにします。 - Fの短3度上はAb
- Abメジャースケールは調号にフラットが4つ付くのスケール
- Fマイナースケールは調号フラットが4つ付くスケール
Fマイナースケールに調号がいくつ付くかわかってしまえば、第vii音を半音上げたハーモニックマイナースケール、第vi音と第vii音の両方を半音あげたメロディックマイナースケールもすぐに導き出せます。
同主短調で覚える方法
もうひとつの覚え方として同主短調を使う方法があります。
例:Cメジャースケールの同主短調はCマイナースケール
例:Aメジャースケールの同主短調はAマイナースケール
この同主短調を使った覚え方をするためにはメジャースケールとマイナースケールの音の違いを知る必要があります。
上の段はCメジャースケールです。
下の段はCナチュラルマイナースケールです。
主音が同じメジャー、ナチュラルマイナースケールを並べると音が違う場所が一目瞭然です。
メジャースケールと比較して主音が同じナチュラルマイナースケールでは
第iii音、第vi音、第vii音が半音低いです。
この違いはものすごく重要なので絶対に覚えてください。
他の主音でも見てみましょう。
見やすさのために調号なしで記譜しています。
やはり、Gナチュラルマイナースケールは第iii音、第vi音、第vii音が半音低くなっています。
(第vii音はメジャースケールでシャープされている箇所がナチュラルマイナースケールでは何も付いていないので半音低いと判断できます。)
繰り返しになりますが、同主短調でナチュラルマイナースケールを覚える、求めるには次のことを覚えておきましょう。
第iii音、第vi音、第vii音が半音低い。
この同主短調を使ったマイナースケールの求め方は次のとおりです。
- 調号、音の並びを知りたいナチュラルマイナースケールを決める。
例としてEナチュラルマイナースケールの調号を知りたいことにします。 - Eメジャースケールを書く。
- Eメジャースケールをの第iii音、第vi音、第vii音を半音下げる。
以上の手順で調号がいくつ付くかわかってしまえば平行調を使った求め方と同様に、第vii音を半音上げたハーモニックマイナースケール、第vi音と第vii音の両方を半音あげたメロディックマイナースケールもすぐに導き出せます。
マイナースケールのまとめ
マイナースケールはメジャースケールと対を成す音楽にはなくてはならないスケールです。
マイナースケールだけでもナチュラル、ハーモニック、メロディックの3種類が存在しますが、それぞれがしっかりと役割があり変化してできているものだと分かれば、実はそこまでややこしくないスケールです。
メジャースケールさえしっかり覚えていれば、平行調、同主短調のどちらかを使ってマイナースケールを求めることできます。
もちろん、音程の並びを覚えても良いですが、スケール同士の関係性を知る意味でも、上の2つは知識として覚えておくことをおすすめします。
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4. 同主調、平行調、属調、下属調