音楽を演奏、作曲する上で避けて通れないものが「スケール」
ポップスやジャズの世界では音階(おんかい)や調よりもスケールの呼び方が馴染みがあると思うので、以降のレッスンではスケールと呼びます。
スケールの仕組みを知ることで何ができるのかというと
- 演奏をするときに音を外しづらくなる
- 曲を歌いやすいキーに変更できる
- アドリブ演奏をするときには必須の知識
- 作曲、編曲するための基礎知識として必須
ざっと列挙しただけでも、かなり恩恵があります。
スケールを覚えるには仕組みを知ることが一番早いです。
※スケールの項目では音程の用語を使用した説明をします。まだ読まれていない方は先に音程レッスンに目を通すことをおすすめします。
そもそもスケールとはなにか?
スケールとは音楽の調(キー)に沿って基準となる音から順番に音を並べたものです。
「C, D, E, F, G, A, B, C」や「G, A, B, C, D, E, F#, G」といった音の並びがスケールです。
もしもスケールが存在しなかったら音楽を分析、演奏する場合に何を基準にすればよいのか分かりづらくなってしまいます。
しかし、スケールが存在することで「この音楽はCメジャースケールです。」と定義することで、「じゃあ、このメロディーはCメジャースケールの第iii音だね」と相対的に音を捉えることができます。(第○音が何かは後半で説明します。)
これは、音楽を構造的に分解して理解できるようになることを意味します。
そのため、スケールとは音楽を知るための「基準、尺度」であると言えます。
スケールの読み方
スケールの呼び方は様々ですが、ポップス、ジャズの世界では一般的に英語で呼びます。
- Cメジャースケール → しーめじゃーすけーる
- Dメジャースケール → でぃーめじゃーすけーる
- B♭メジャースケール → びーふらっとめじゃーすけーる
といった具合です。
間違ってもイタリア語の音名と英語のスケールという単語を混在させた呼び方はしません。
- ド・メジャースケール
- レ・メジャースケール
音名のドやレなどの読み方はイタリア語のため、#や♭の記号をつけて読むときは次が正解です。
- # → Diesis (ディエシス)
- ♭ → Bemolle (べモーレ)
- x(ダブルシャープ) → Doppio diesis (ドッピオ・ディエシス)
- ♭♭(ダブルフラット) → Doppio bemolle (ドッピオ・べモーレ)
スケール以降の解説項目では本来の書き方に沿ったC#やDbといった、英語準拠の書き方をします。
※小文字のb(ビー)は慣習的に♭(フラット記号)の変わりに使われるため、スケール以降でもbに統一します。
英語で音名を読むことに慣れていない方、忘れてしまった方は「初心者でもわかる楽譜の読み方 | 2. 臨時記号」を読んでみてください。
スケールの種類は全部で何個あるの?
基本的なスケールは明るい雰囲気のメジャースケールが1種類、暗い雰囲気のマイナースケールが3種類あり、合計4種類あります。
※他にもスケールはたくさんありますが、まずはメジャー、マイナーに焦点をあてて解説します。
この4種類のスケールが各調(CメジャースケールやDメジャースケールなど)に存在します。
- 調号がつかないものはC調のみ
- 調号にシャープが付くものが7種類
- 調号にフラットが付くものが7種類
「1+7+7=15」の調にそれぞれ4種類のスケールが存在します。
そのため合計で「15x4=60」のスケールが存在することになります。
さて、この60のスケールを一つずつ覚えるのはあまり効率的ではありません。
基本的な4種類のスケールの仕組みを理解すれば、調号の付く位置を忘れてしまっても自力で求めることができます。
それぞれのスケールの仕組みを解説する前に知っておくべき前提知識を2つ解説します。
音度(おんど)
スケールの説明には音度(おんど)を知る必要があります。
スケールには基準となる音(はじまりの音)があります。
基準となる音は
- CメジャースケールであればC
- GメジャースケールであればG
- BbマイナースケールであればBb
といったようにそれぞれのスケールの名前の最初についている音が基準となる音です。
その音から2度ずつ上へ次の音へと順番に数字を割り振ったものが音度です。
ローマ数字に慣れていない方はこちらを表を参考に楽譜を見てください。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
---|---|---|---|---|---|---|
i | ii | iii | iv | v | vi | vii |
音度は小文字のローマ数字で書き表します。
例えば上のCメジャースケールの5つ目の音であるGは
「Cメージャースケール第v音(だいごおん)」
と呼びます。
スケール上の音を音度で読む場合には「第○音」といったように第(だい)をつけて読むのが一般的です。
主音、下属音、属音、導音
「C, D, E, F, G, A, B」の中のCのように、スケールの始まりの音(基準となる音)は「主音(しゅおん)」といいます。
主音以外にも音階上のそれぞれの音に対して名前がついています。
名前のついた音の中でも重要なものがこの4つです。
- 主音(しゅおん)
- 下属音(かぞくおん)
- 属音(ぞくおん)
- 導音(どうおん)
どのメジャースケールにおいてもこれらは常に同じ音度につきます。
譜面で見てみましょう。
第i音 | 主音 |
---|---|
第iv音 | 下属音 |
第v音 | 属音 |
第vii音 | 導音 |
このようにそれぞれ、第v音は属音…といったように音度によって名前が決まっています。
そのため、主音がC以外のときも必ず同じ音度に同じ名前が付きます。
覚えるときのポイントは、「C」という音自体が主音なのではなく、「スケール上の第i音が主音」なのでCメジャースケールの場合は第i音の「C」が主音になるということです。
同様の理由で、Cメジャースケールの第iv音はFなので、CメジャースケールではFが下属音になります。
Dメジャースケールの場合
例えばDから始まるスケールの主音、下属音、属音、導音は下の楽譜のようになります。
※調号にシャープが2つ付いていますが、詳しくは次の項目で解説するので一旦無視してください。
Dメジャースケールでは主音、下属音、属音、導音がCメジャースケールとは違う音になっています。
繰り替えしになりますが、スケール上の第何音かでそれぞれ名前が決まるだけで、CやF、Gなどの音自体が主音や下属音、属音と絶対的に決まっているわけではないためです。
Fメジャースケールの場合
下の楽譜はFメジャー・スケールです。
※こちらも調号がついていますが、一旦無視してください。
FメジャースケールでもCメジャースケールやDメジャースケールと同じ位置に主音や属音があります。
これらの例からわかるとおり、主音、下属音、属音、導音はどのメジャースケールでも常に同じ音度に付きます。
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2. メジャースケールの仕組みと覚え方のコツ