楽譜って読めたほうがいいの?
「何を今更!そんなの読めたほうが良いに決まってんじゃん!」
おそらく音楽をやっている方は9割9分そう言うのでは無いでしょうか?
僕も迷うこと無くそう答えます。
もしこんな風に質問されたらどう答えますか?
「では、なぜ楽譜が読めたほうが良いと思いますか?」
この質問にコンポーザー(作曲家)視点から答えていきます。
質問に答えていくことでなぜ楽譜が読めないと絶対に損をするのか分かるはずです。
1. そもそも楽譜とは何か
音は目に見えるものではありません。
音が色や形として認識できるのであればシナスタジア(共感覚)の持ち主の可能性がありますが、ほとんどの人は音が見えません。
聞こえるものです。
耳でしか知覚できないものを人に伝えるにはどうしたら良いのでしょうか?
(厳密には音は振動なので体で感じることもできます。)
ここで考えられる方法が2つあります。
伝えたい相手の前で演奏し、真似をさせる
これは口頭伝承と呼ばれる形式です。
各民族の伝統音楽などで行われることが多いです。
何かしらの方法で記号化する
こちらが楽譜です。
音の高さと長さ、加えて演奏方法を記号化し、一定のルールにしたがって書かれたものが楽譜です。
あえて楽譜と書かず、何かしらの方法で記号化と書いたのは楽譜にも様々なスタイルがあるからです。
よく目にする5本の線とオタマジャクシの楽譜は、5線譜と呼ばれる形式の一つに過ぎないんです。
ちなみに西洋音楽の文化が入るまで日本では文字で書かれた文字譜が広く使われてきました。
現在でも日本古来の伝統音楽や民謡などでは文字譜を使用します。
2. 楽譜が読めると音楽の構造を理解しやすい
ここからは5線譜を例として話をしていきます。
楽譜には小節線があり、どのフレーズがどれくらいの長さを持っているのかを数えることができます。
楽譜にした時点で音楽的解釈はさておき、誰が読んでも同じ意味として音楽を理解できるようになります。
「ド」と書かれているものに対して
「いや、これはレだ!」と言う人はいないはずです。
まれに「1+1は?」と聞いて
「10」と答えるようなタイプの人間が音楽でもいますが、そういう人がいたらきっと音楽学専攻出身の人間です。(僕です)
また、予想ではなく事実として何の楽器が何を演奏しているかまでわかります。
この点が、自分の音楽の世界、知見を広げるために大きく役立ちます。
美術の世界では勉強法の1つとして模写があります。
これは、他人の技術を真似することで自分の技とする狙いがあります。
音楽で他人の(作曲)技術を真似し、自分のものとするには楽譜を読むことが一番てっとり早く、確実です。
3. 聞き取れなくても何の音かわかる
そりゃそうです。
そこに何を演奏しているか書いてあるのですから。
例えば、どんなに耳が良い人でも限界ギリギリの速度で演奏されたフレーズを聞き取ることはかなり難しいです。
音楽プレイヤーの再生速度を半分にして耳コピする方法もありますが、正直それでも聞き取れないものもあります。
そんな限界ギリギリのフレーズでさえ、楽譜さえ読めればゆっくりと読んで理解することができます。
ただ、一つだけ落とし穴があります。
adlibの表記以降一切の空白。
そう、アドリブです。
こればっかりは頑張って聞き取るしかありません。
ですが、すべてのパートがアドリブということはあまりなく、他のパートはしっかりと音が書いてあります。
なので、なんとなくでもアドリブが何の演奏しているかが予想できます。
4. 作曲者の意図が分かる
5線譜の世界には※異名同音が存在します。
C#とD♭は同じ音ですが、楽譜にするとそれぞれ意味が異なります。
(詳しく説明するとすごく長くなるので割愛します)
一見同じようでもなぜC#ないし、D♭と書いたのかを理解するには楽譜を見たほうが確実です。
実は慣れてくると楽譜を見なくても#なのか♭なのかは分かるようになりますが、最初からそれをやろうとするのは危険です。
自身をもってどっちで書かれているのかを説明できるようになるまでは楽譜から理解する必要があります。
※同じ高さでも名称が異なる音
5. まとめ
いかがでしょうか?
まだまだありますが、以上が僕が考える楽譜が読めたほうがいい理由です。
文字が読めれば本が読めるように、楽譜が読めれば曲を詳しく知ることができます。
本を読むと世界が広がるのと同様に、楽譜を読むと自分の音楽の世界をどんどん広げていくことが出来ます。
本を読むように楽譜が読めるようになると、それはすごく楽しいです。
音楽を演奏する人や作曲家だけでなく、音楽を聞く人も「何となく聞く」から「理解して楽しむ」へとステップアップできます。
簡単な楽譜が読めるようになるには実はそんなに時間がかかりません。
「楽譜 読み方」で検索しても相当量のページが見つかります。
(書き方や見た目は違えど初歩的な内容であればどれも書いてある内容に大差はありません。)
まずは、ドレミといった音の読み方からはじめてみませんか?
きっと音楽が今以上に音楽がわかります。