前回の音程レッスンでは音程の数え方をご紹介しました。
まとめると、音程は音と音の距離を測るものであること、1度、2度と数えること、シャープ、フラットは一旦取っ払って数えても度数には影響がないということでした。
レッスン2ではシャープ、フラットのつかない、白鍵の音だけで構成されたあらゆる音程を見ていきます。
レッスン1よりも若干、覚えることが多くなるので何度も繰り返し読みことをおすすめします。
鍵盤楽器を持っている方は実際に鍵盤を押さえながら読むと、耳で音のイメージがつかみやすくなるので特におすすめです。
一度でこの量を覚えるのは余程、記憶力に自信のある方でなければ難しいです。(僕はできませんでした。)
音程は長2度、短3度、完全5度と表記する
前回のレッスンでは音程を2度、3度と数えていました。
しかし、本来はより正確に音程を表記するために長2度や短3度、完全5度といったように数字の前に長・短・完全などが付きます。
これらはどういった法則で付けられるのか順を説明します。
見出しには日本語名を、そのすぐ下には英語名を表記しています。
これは後々、コードを勉強する場合や、分析で速記をする場合に役立ちますので余力のある方は是非覚えてみてください。
完全1度
英語名: Perfect unison (P1)
ドとド、レとレ、全く同じ音で構成される音程は完全1度です。
別名ユニゾンともいいます。
ピアノはギターなどの楽器と違い、楽譜上の一つの音につき、鍵盤一つ割り当てられているため、実際に演奏すると一つの音しかでません。
ですが、楽譜上で2つの音がユニゾンで書かれている場合は丁寧に指を二本添えて演奏することがあります。
長2度と短2度
英語名: Major 2nd (M2), Minor 2nd (m2)
2度は音程を形作る最小単位です。
白鍵上のとなり合う音のほとんどは長2度です。
例外として、ミとファ、シとドだけが短2度です。
この違いは何でしょうか?
答えはとなり合う音の間に黒鍵を含んでいるかどうかです。
もう少しわかりやすくするために、鍵盤を次のような形にしてみました。
ドのとなりはレではなくド#に、レのとなりはミではなくレ#になりました。
これが本来の音の並びです。
鍵盤楽器は黒鍵を交えながら順番に弾いていくと、必ず半音ずつ音が上がり(下がり)ます。
この半音こそが短2度なのです。
鍵盤をこの形にしてもミとファ、シとドの間には黒鍵はありません。
つまりこの2つの組み合わせのみが白鍵だけで音程を作ったときにあらわれる短2度です。
それ以外の白鍵の組み合わせを見てみましょう。
例えばドとレの間には黒鍵が挟まっています。
つまり、ドとド#、ド#とレの半音2つがドとレの音程(距離)です。
この半音2つ分の距離が長2度です。
他のファとソやラとシも、もれなく半音2つ分の距離があります。
楽譜上では白鍵上にある半音程(ミとファ、シとド)を意識して見ることは慣れていないと難しいため、楽譜と鍵盤のイメージをセットにして覚えましょう。
長3度と短3度
英語名: Major 3rd (M3), Minor 3rd (m3)
長3度は半音4つで構成される音程
短3度は半音3つで構成される音程
このように数えることができますが、この考え方はあまりおすすめしません。
理由は単純で、この数え方では音程を把握するのに時間がかかってしまいますし、すべての度数のパターンに対して「これは半音○○個で…」と1つずつ正確に数を覚えるのは非効率的だからです。(とはいえ楽器によっては半音を数えたほうが早いものも存在します。)
そこで次の方法で覚えます。
長3度は長2度2つ分の音程
短3度は長2度1つと、短2度1つの音程
なんだか余計に難しく感じますか?
それぞれ見ていきましょう。
長3度
長2度2つ分の音程とは、別の言い方をすると「短2度を含まない3度音程」です。
白鍵上で考えてみましょう。
短2度を含まない、つまりミとファ、シとドの音程を含まないものが白鍵上の長3度です。
白鍵上でこの条件を満たす組み合わせは3つだけです。
- ドとミ
- ファとソ
- ソとシ
これらの3つが白鍵のみで構成された長3度です。
短3度
長3度と真逆でミとファもしくはシとドの音程を含むものが白鍵上の短3度です。
この条件を満たす組み合わせは4つです。
- レとファ
- ミとソ
- ラとド
- シとレ
これらが白鍵のみで構成された短3度です。
どの音程にも間にミとファもしくはシとドが含まれているのがわかります。
3度と2度の音程を覚えると他の音程を数えるのが格段に早く、わかりやすくなります。
3度は和音を構成するとても重要な音程なので長3度、短3度の響きと一緒にしっかりと覚えましょう。
完全4度と増4度
英語名: Perfect 4th (P4),Augmented 4th (A4)もしくはTritone (TT)
完全4度は半音5個で構成される音程
増4度は半音6個で構成される音程
ただし、これら音程も別の覚え方をします。
増4度
白鍵上で音程を構成する場合、ファとシのみが増4度で、それ以外はすべて完全4度です。
もう少し詳しく見てみましょう。
増4度は別名、三全音とも呼ばれます。
その名の通り全音3つ、つまり長2度3つで構成された音程です。
※英語ではトライトーンとも呼びます。
ファとシの間には「ファ、ソ」「ソ、ラ」「ラ、シ」の3つの長2度がありますね。
短2度を含めずに長2度を3つ並べることができるのは白鍵上で「ファとシ」のみです。
完全4度
白鍵だけで作れる音程のうち、増4度以外はすべて完全4度です。
完全4度は長2度が2つ、短2度が1つで構成された音程です。
ミとファを含む完全4度
- ドとファ
- レとソ
- ミとラ
これら3つの完全4度には必ず「ミとファ」の短2度が含まれています。
シとドを含む完全4度
- ソとド
- ラとレ
- シとミ
これらの3つの完全4度には必ず「シとド」の短2度が含まれています。
楽譜上、鍵盤上でこれらを覚えるのはとても簡単です。
4度音程を構成する低い音と高い音の間に「ミとファ」もしくは「シとド」が挟まっていないかさえ覚えればOKです。
完全5度と減5度
英語名: Perfect 5th (P5), Diminished 5th (d5)
完全5度は半音7個で構成される音程
減5度は半音6個で構成される音程
完全5度
完全5度は半音7個で構成された和音ですが、言い換えると「長3度と短3度それぞれ1つずつ」で構成された和音です。
白鍵上で作ることができる完全5度は次の6つです。
- ドとソ
- レとラ
- ミとシ
- ファとド
- ソとレ
- ラとミ
順番に見ていきましょう。
ドとソには「ドとミの長3度」、「ミとソの短3度」
レとラには「レとファの短3度」、「ファとラの長3度」
ミとシには「ミとソの短3度」、「ソとシの長3度」
このように長3度と短3度の順番は前後しますが、どちらかが必ず1つずつ含まれるようになっています。
減5度
白鍵だけで作れる音程のうち「シとファ」のみが減5度になります。
減5度は「短3度が2つ」で構成された和音です。
「シとレの短3度」、「レとファの短3度」によって構成されていますね。
半音の数で完全5度と減5度を比較してみましょう。
完全5度は長3度と短3度が1つずつでした。
減5度は短3度が2つなので、完全5度よりも「半音1つ分狭くなっている」ことがわかります。
さて、ここで何かお気づきではないでしょうか?
減5度と増4度はどちらも半音6個で構成された音程です。
実際の音を鳴らしたときの響きも同じです。
ではなぜ呼び方が違うのでしょうか?
答えは楽譜上で見ると一目瞭然です。
音程とはそもそも楽譜上のシャープやフラットを付けない状態で4度、5度と数えることができると前回の記事でご紹介しました。
シとファの間に半音がいくつなのかはひとまず置いておいて、この音程が5度であることに間違いありません。
では「ファとシ」の音程は楽譜上で見るとどうでしょうか?
こちらも半音いくつ分で構成されているかはさておき、楽譜上で間違いなく4度です。
繰り返しにはなりますが、音程とは音符の○度(今回の例では4度や5度)を基準にして、そこから音程がどれくらい「広くなったか」、「狭くなったか」によって「長、短、完全、増、減」が数字の前につきます。
言い換えれば「増4度」とは「完全4度より半音1つ分広い4度」、「減5度」とは「完全5度より半音1つ分狭めの5度」です。
まとめると、
「増4度と減5度では音程として含んでいる半音の数は一緒でも、楽譜上でみるとそれぞれ4度、5度と基準としている音程が違うので別物として扱われる」ということです。
このような理由から「半音いくつ分(例えば完全5度なら半音7つ分など)」で音程を覚えるのではなく、「完全5度とは長3度、短3度の組み合わせ」で覚えたり、楽譜を見て直感的に判断できるように覚えることをおすすめしています。
もちろん、「レとラ」や「ファとド」を見てストレートに完全5度と判断できるのが理想です。
ですが、「あれ、どっちだったっけ?」と忘れてしまったときの思い出すためのきっかけとしてそれぞれの音程を構成する要素は何かといった覚え方をしています。
長6度と短6度
英語名: Major 6th (M6), Minor 6th (m6)
長6度、短6度まで来たらもう少しです。
長6度は「完全5度+長2度」、短6度は「完全5度+短2度」もしくは「減5度+長2度」です。
別の数え方だと
長6度は「音程の間にミとファ、もしくはシとドの短2度をどちらかひとつしか含んでいないもの」
短6度は「音程の間にミとファ、もしくはシとドの短2度をどちらも含んでいるもの」
です。
順番に見ていきましょう。
長6度
長6度は全部で4つあります。
- ドとラ
- レとシ
- ファとレ
- ソとミ
この4つのうち、ドとラ、レとシが
「ミとファの短2度」を含む長6度です。
ファとレ、ソとミが
「シとドの短2度」を含む長6度
どの音程も「完全5度+長2度」の組み合わせでできています。
そして、「ミとファもしくはシとドの短2度」のどちらか一方しか含まれていません。
短6度
- ミとド
- ラとファ
上の2つは「完全5度+短2度」の組み合わせです。
また、「ミとファ、シとドの短2度」のどちらも含まれています。
シとソ
シとソの間には「シとド、ミとファの短2度」のどちらも含まれています。
さて、シとソは完全5度ではなく減5度です。
減5度を基準にした場合はそこから更に長2度を足すことで短6度になります。
少しむずかしいので詳しく見てみましょう。
状況を整理します。
- 短6度とは「完全5度+短2度」です。
- 減5度とは完全5度が半音1つ分狭くなった音程です。
(言い換えれば、減5度を半音1つ分広くすれば完全5度になります。) - 長2度は短2度が半音1つ分広くなった音程です。
減5度を完全5度と同じ音程にするためには半音1つ分足りません。
それを補うために短2度よりも半音1つ分広い長2度を使います。
これにより「完全5度+短2度」=「減5度+長2度」であることが導きだせます。
「減5度+長2度」が短6度と覚えづらい場合はそもそも減5度を完全5度にしてしまってから考える方法があります。
シとファは減5度ですが、ファを半音上げたファ#にすると、音程が半音1つ分広がり完全5度になります。
ファ#とソは半音で隣り合っています。半音1つは短2度の音程です。
これで「完全5度(シとファ#)+短2度(ファ#とソ)」で短6度とカウントすることができます。
長7度と短7度
英語名: Major 7th (M7), Minor 7th (m7)
長7度は「完全5度+長3度」
短7度は「完全5度+短3度」もしくは「減5度+長3度」です。
別の数え方だと
長7度は「音程の間にミとファ、もしくはシとドの短2度をどちらかひとつしか含んでいないもの」
短7度は「音程の間にミとファ、もしくはシとドの短2度をどちらも含んでいるもの」
です。
6度のとき覚え方が非常に似ていますね。
7度の場合は「ミとファ、シとド」のどちらも含まれているかどうかで考えたほうが数えやすいですが、「5度+3度」の数え方を覚えておくとコードの勉強を始めたときや、白鍵だけでは表せないシャープやフラットが付いた音符同士の音程を知るときに理解しやすくなります。
是非どちらの数え方も覚えておきましょう。
長7度
- ドとシ
- ファとミ
上の2つは「完全5度+長3度」の組み合わせです。
また、「ミとファ、シとドの短2度」のどちらか1つしか含まれていません。
短7度
- レとド
- ミとレ
- ソとファ
- ラとソ
これらは「完全5度+短3度」の組み合わせです。
また、「ミとファ、シとドの短2度」のどちらも含んでいます。
- シとラ
短6度のときと同様に「シとファ」は減5度で完全5度よりも半音1つ分狭いので、組み合わせる3度は長3度になります。
シとラの間にも「シとド、ミとファの短2度」のどちらも含んでいます。
完全8度
英語名: Perfect octave (P8)
白鍵だけで作れる8度には完全8度(オクターブ)しかありません。
同じ音2つで出来る音程でも高さが違うと完全1度、完全8度と区別されます。
なので覚えるのはすごく簡単です。
ドから1つ上のド、レから1つ上のレといったように、音名が全く同じ音で高さが1つ違いのものをオクターブ高い、オクターブ低いといったようにオクターブと呼びます。
音程名では完全8度と呼ばれます。
まとめ
読了お疲れ様でした!
白鍵だけで作ることができる音程は以上ですべてです。
楽譜にはシャープやフラット、ダブルシャープ、ダブルフラットなど臨時記号や調号による音の変化があるため、黒鍵も含む音程を覚える必要があります。
しかし、基本的には白鍵をベースに音程を導き出すことになるため、1つずつの音程を細かく解説しました。
次回はいよいよ黒鍵を含む音程の解説です。
ですが、白鍵上でできる音程を覚えてさえおけば実はそこまで難しくありません。
是非何度も読み返してみてくださいね。
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3. シャープやフラットが付く音程