クラシックの曲や打楽器の譜面によく出てくる音の書き方に前打音や後打音という装飾音があります。
(吹奏楽曲の木管パートでも見かける機会が多い印象です。)
それぞれ演奏方法が異なるため一つずつ見ていきましょう。
前打音
通常の大きさの音符の前に付けられた小さな音符が前打音です。
前打音にも小さな音符に斜線が入っている短前打音と、斜線の入っていない長前打音、2つ以上の音符がつながった複前打音があります。
短前打音
斜線のつけられた小さな音符、この短前打音はスラーでつながった先の音符よりも前に短く演奏します。
奏法は短前打音が拍頭になる次のようなパターン
他には前打音がつけられた音符が拍頭になるように短前打音が拍頭より少し前になる次のパターンがあります。
どちらを選択するかは曲によりますが、特にクラシックであれば指定されているケースもあります。
長前打音
ポップスなどではまず見かけることがない長前打音。
こちらは斜線のついていない小さな音符です。
長前打音はつながった先の音符の半分の長さ、もしくはそれ以上の長さを持つ装飾音です。
曲や拍子によって書かれた長前打音の解釈の仕方が異なることが多いため、クラシック曲でこちらの音符が記譜されているものにチャレンジする場合は解説がしっかりと記載されている譜面を購入することをおすすめします。
例えば4/4拍子で次のような4分音符の長前打音が2分音符に対して書いてあったとします。
その場合はこのように演奏します。
長前打音がつけられた2分音符は4分音符に変化し、長前打音の4分音符はそのまま4分音符になっています。
次に8分音符の長前打音が4分音符に対して書かれた例です。
この例は次のように演奏します。
先程の例で2分音符が半分の音価の4分音符になったように、この例でも4分音符が半分の音価の8分音符に変化しています。
では3/4拍子で書かれた場合の例を見てみましょう。
この長前打音の演奏例は2つあります。
先程までの例にならえば、2分付点音符は半分の音価の4部付点になりそうですが、実際のところはそうはならず、2つの演奏解釈が発生しています。
このように曲や前後関係などの状況によって解釈が異なるため、理解することがなかなか難しいです。
そのため、現代においては特別な意図がない限り、長前打音で譜面を書くメリットは演奏者にも作曲者にもあまりメリットがないため近年の曲ではあまり使われません。
複前打音
2つ以上の小さな音符がつながったものが複前打音です。
短前打音と同じく、奏法は短前打音が拍頭になる次のようなパターン
先短前打音が拍頭より少し前になり、つながった音符が拍頭になるパターンがあります。
複前打音は比較的使用される頻度のある記譜方なので覚えておいて損はありません。
後打音(中間打音)
前打音が目的の音の前に付けられる装飾に対し、後打音はその名の通り、目的の音の後につけられる装飾です。
上の譜例は次のように演奏します。
よく見ると、最初に紹介した前打音とスラーの位置が前打音と違うだけでリズム的な音の並び同じです。
(上の譜例の演奏例)
前打音と後打音はリズムこそ似ているものの、後打音はあくまでも『目的の音の後ろに装飾された音が付加されている』ことに意識しましょう。
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17. モルデント、プラルトリラーなどの装飾記号